蛭川研究室 断片的覚書

私的なメモです。学術的なコンテンツは資料集に移動させます。

蛭川研究室ブログ新館 断片的覚書

アカデメイアの跡地(ギリシア・アテネ)[*1] 蛭川研究室ブログ新館の、覚書の置場です。日々の雑感や、ちょっと考えたことを、書き留めています。日付がつくので、日記のようでもありますが、とくに経時的に出来事を報告する日記ではありません。学術的に意…

見たままモードの実験

見たままモードの実験*1。 カンデル神経科学 第2版 メディカルサイエンスインターナショナル Amazon *1:ここに脚注を書きます

【口述】「2024年度の人類学A」の授業を始めるにあたって

去年の秋にはSADに罹患しました。気温の急低下によって脳が急いで冬眠準備を始めたのでしょうか。自室に引きこもって過眠と過食、書類や原稿の締切を破る、伸ばすという「罪」を冒したぶん「負目性」は増える一方であり。だから仕事をしたくないといって、当…

治療という名の復興ー医療サイケデリック・ルネサンス

サイケデリックスの研究は、2015年ぐらいから、精神疾患の改善という実用的なところから復活してきたらしいが、気づくのが遅くなった。 LSD研究論文の年次推移[*1] 研究の盛衰をグラフで見ると、まるで感染症のような増減がある。サイケデリックスが国際的に…

セレンディピティとルネサンス

この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、個人の感想も含まれており、その正確性は保証されていません[*1]。 近年の脳神経科学の急速な進歩にもかかわらず、精神疾患の治療薬の開発は1950年代から1970年代にかけて盛んに行われた一方、…

サイケデリックスと他の精神科治療薬との相互作用

この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、個人の感想も含まれており、その正確性は保証されていません[*1]。 サイケデリックスは抗うつ薬としての効果が認められつつあるが、他の抗うつ薬や気分安定薬との相互作用についてはまだよく知…

サイケデリック文化の独立したパラダイム

サイケデリック・ルネサンスという言葉が使われているが、ルネサンスという語を科学史的にとらえるなら、復興というよりは、異なるパラダイムが社会的偶然によって結びつけられる、という意味で理解される。 (0)共進化的起源 サイケデリックスは人類の出…

動的平衡としての〈双極〉

この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、個人の感想も含まれており、その正確性は保証されていません[*1]。 マッサージ療法 制止と激越 双極状態 マッサージ療法 小一時間ほどマッサージを受けて、立ち上がると、急に身体が軽くなった…

世界没落体験 Weltuntergangserlebnis

世界没落体験(Weltuntergangserlebnis)は、ドイツ精神病理学の用語。 世界の破滅が間近に迫っている、あるいは終末の後に新しい秩序をが作られる、また、そうした一連の出来事の中で自分が特別な役割を担っているという妄想的観念。統合失調症の初期にあら…

治療という名の復興 ーサイケデリック・ルネサンスー

この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、個人的感想が多々混じっており、その正確性は保証されていません[*1]。適宜、読み飛ばしてください。 昨秋、つまり2023年の秋から、今年の1月にかけて、持病の過眠と倦怠感が、かなり悪化した…

躁鬱病圏の精神病理学と生物学的精神医学

この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、個人の感想も含まれており、その正確性は保証されていません[*1]。 この冬は、冬眠病のような休眠状態にあったが、身体の運動のほうの制止が強いのは相変わらずで、その代わりに、日本語なら難…

当事者研究としての人間ドック

朝 鬱 癲狂 オピオイド テストステロン 明日の朝から人間ドックではなかったかということを思い出し、慌てて電話をして確認。毎年、三月、春休みの時期に、杏雲堂病院に行くようになった。 重くて動かない体を無理やり動かして、5時直前に健康保険組合の窓口…

断眠療法

「気分障害に対する新しい治療法の可能性:「覚醒療法」のご紹介」松井健太郎、長尾賢太朗、吉池卓也(国立精神・神経医療研究センター) https://t.co/CV5Z4SVOri— Tatsu Hirukawa / 蛭川立 (@ininsui) February 11, 2024 (この記事は「はてな記法」で書い…

医療化

睡眠は病か 睡眠は病か 冬になると眠くなることを「冬眠病」と書いてきたが、「冬眠」を「病」とするかどうかは、「医療化(medicalization)」の問題である。 冬眠はツキノワグマの社会ではマジョリティだが、中緯度に住むヒトの社会ではマイノリティである…

カントにおける時空の概念

カントの認識論について、あちこちに書いた記事へのリンク。 hirukawa-notes.hatenablog.jp hirukawa.hateblo.jp hirukawa.hateblo.jp hirukawa-notes.hatenablog.jp これらは カントの和訳についての文献案内 カントにおける時空の概念 規律としての時間 と…

『魂の形について』

博識な才女、多田智満子のエッセイ『魂の形について』。 魂の形について (ちくま学芸文庫)作者:多田 智満子筑摩書房Amazon 古代ギリシア語のプシュケーは、吐息と共に吐き出される魂のことであり、また蝶によって象徴されるともいう。 www.youtube.com エス…

てんかんと片頭痛による知覚・認知の変容

この記事には医療・医学に関する記述が数多く含まれていますが、個人の感想も含まれており、その正確性は保証されていません[*1]。 子どものころから、片頭痛やてんかんに似たような体験がよくあった。 部位によるてんかんの諸症状[*2] 片頭痛の前には閃輝暗…

原生時間と線型時間

Twitterがいつの間にか「X」になり、有料で140文字の字数制限を超えることができるようになったという。 Twitterの面白さは、一行のつぶやきにあった。「ラーメン屋なう」のような文字列であらわされるできごとは、俳句や短歌のように圧縮された情報でもない…

慢性冬眠病? 当事者的考察

「気分障害」は「症状」なのか「病気」なのか? 心因性・外因性・内因性 単極性と双極性 冬眠病 神経疾患 薬物療法 ウイルス感染後遺症 「気分障害」は「症状」なのか「病気」なのか? 病的な過眠と倦怠感は幼少時からの持病だが、「○○病」という確定した診…

Y染色体ハプログループと日本列島民の系統

縄文人の染色体 DNA親族検索・遺伝子婚活 日本列島民の呼称 【補遺】極東アジアの孤立言語と近現代の国境線 hirukawa-archive.hatenablog.jp 承前。 縄文人の染色体 GeneLifeHaploが2.0にヴァージョンアップし、Y染色体を調べるサービスを始めたというので利…

グリニッジ天文台

経度0線のレーザー光線 2014年、ロンドン都グリニッジ区に住んでいたころの写真。 記述の自己評価 ★★★☆☆ (つねに加筆修正中であり未完成の記事です。しかし、記事の後に追記したり、一部を切り取って別の記事にしたり、その結果内容が重複したり、遺伝情報…

El Diario de la Dieta ー ダイエット日誌 2023/07/01

医療用サイケデリックス合法化 ユリウス日 腸内細菌検査 アスパルテームの発がん性 男性的身体とテストステロン 医療用サイケデリックス合法化 オーストラリアが連邦レベルでシロシビン含有キノコとMDMAの処方を合法化した。 「MDMA:オーストラリアが世界初…

大麻とカンナビノイドのことなど 研究ノート 2023/06/21

大麻といえば覚醒剤と並んで(というよりは混同されて)怖い違法薬物の代名詞になってしまっている。 私はもともとサイケデリックスを含む薬草の文化について研究してきたのだが、だから大麻、つまりアサも北インドで儀礼的に使用される薬草だという認識が先…

MDMA裁判のことなど 研究ノート 2023/06/20

弁護士会館(東京・霞ヶ関) 薄井真由子裁判長はすこし可愛らしい感じの四十歳ぐらいの女性で、両脇に中年男性二人を従わせていた。 判決での物質名は「3、4、メチレンジオキシ、N、メチル、α、メチル、2、フェネチルアミン、別名、MDMA」と、たどたど…

メソアメリカのサイケデリック薬草文化

hirukawa-archive.hatenablog.jp 承前。 トゥルム遺跡・風の神殿(ユカテック・マヤ末期・13-15世紀)(1998年に訪問) メソアメリカのサイケデリック薬草文化について過去の記録を再発掘中。 記述の自己評価 ★★★☆☆ (つねに加筆修正中であり未完成の記事で…

サイケデリック・ルネサンス

セレンディピティ ー『LSD』との出会いー LSIとLSD 理系の神秘主義 深い遊び サイケデリック体験と無意識 神経化学の用語 【余談】精神活性物質の社会的階層 セレンディピティ ー『LSD』との出会いー LSIとLSD ティーンエイジャーのころに音楽などを通じてド…

仏教の聖地

思想としての仏教については学んできたつもりだが、地理的歴史的な背景については、あまり知らなかった。 経典を読んでいると、国の名前、川の名前、村の名前などが出てくるが、書籍には地図がついていないことが多い。二千年ぐらい前のガンジス川の流域だろ…

創造的狂気と市民的不服従

前橋地方裁判所で行われた、大藪龍二郎さんの公判の後の記者会見の様子が、Instagramにアップされた。 View this post on Instagram A post shared by Green Zone Japan (@greenzonejapan) www.instagram.com www.youtube.com 大藪さんは、大麻を摂取すると…

サイケデリックスと物質誘発性障害

この記事は書きかけです。 臨床研究が進むにつれ、サイケデリックスの副作用についても明らかになってきた[*1]。一過性の頭痛や吐き気、不安は一般的である。体温の上昇、発汗、脱水症状はとくにMDMAで特徴的である。また吐き気と嘔吐はMAOIを含有するアヤワ…

サイケデリックスによる依存症の改善

クラシック・サイケデリックスには精神依存性があり、耐性が形成されるが、使用しなければすぐに元に戻る[*1]。LSD、シロシビン、メスカリンには交差耐性があり[*2]、THCとアンフェタミンとは耐性を形成しない[*3]。逆耐性が形成され「フラッシュバック」が…