蛭川研究室 断片的覚書

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有袋類と真獣類の収斂進化

有袋類には「フクロ云々」と呼ばれる動物が多い。収斂進化という不思議な現象である。

https://upload.wikimedia.org/wikipedia/commons/thumb/4/43/T2825_to_West_End.jpg/2880px-T2825_to_West_End.jpg
CityGlider

ブリスベンのバスはフクロモモンガである。

飛ぶように走るから、バス停でもきちんと「hail」しないと止まらずに飛んで行ってしまうことがある。

SNSのプロフィール写真をネコにする人は少なくない。オーストラリアでは哲学科の先輩で、プロフィール写真をフクロネコにしているドイツ系女性と知り合った。

日本人男性「ドイツではハイルすると違法だというのは本当ですか」
ドイツ女性「そうらしいですね。私は移民だからよくわかりませんけど」
日本人男性「移民の人で嫌がる人もいるのではないですか」
ドイツ女性「でもドイツ語と英語では綴りが違うのですよ」

フクロネコとネコはあまり似ていないが、フクロモモンガとモモンガはよく似ている。フクロコウモリは存在しないが(これから進化するのだという説もあるらしい)、コウモリはまるで鳥類のように空を飛ぶし、翼竜もそっくりな形をしている。恐竜でいえば魚竜はその名のとおり魚類のようであり、イルカとも形態がよく似ている。

感染しても無症状でまったく気づかないようなレトロウイルスが大量に身の回りを飛び交っていて[*1]、ときに種を超えて水平伝播しているのではないかと考えるのは、さして突飛な空想ではない。ヒトのゲノムの半分はレトロウイルスやレトロトランスポゾンに由来するということがわかってきている[*2]

なぜかコウモリを自然宿主とするウイルスが何度も人間に感染してくるようだが、あるときいっせいに人間に羽が生えて空を飛び始めたら、と考えてみるのも悪くはない。小松左京SF小説に、そんな話があったかもしれない[*3]

もっとも、フクロサルというのは見つかっていない。もう絶滅してしまったのかもしれない。ウオーレス線の「こちら側」にあるフローレス島で独自の進化を遂げた原人の化石が発見されたときには驚いたが、どこかでフクロサルがフクロヒトまで進化し、ひっそりと絶滅したのかもしれない。化石が見つかってDNAをPCRで増やして分析したら、と想像したりもする。



CE2020/05/18 JST 作成
CE2020/05/22 JST 最終更新
蛭川立

*1:[無署名記事](2008).「12.『ウイルスと共に生きる』」『一般社団法人 予防衛生協会』(2020/05/22 JST 最終閲覧)

*2:[無署名記事](2015).「脳の認知機能に重要なレトロトランスポゾン由来の獲得遺伝子を発見」『国立大学法人 東京医科歯科大学 難治疾患研究所』(2020/05/22 JST 最終閲覧)

*3:小松左京 (1982).『はみだし生物学』 新潮社.