蛭川研究室 断片的覚書

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【文献】糸川昌成『脳と心の考古学』

脳と心の考古学 統合失調症とは何だろうか

脳と心の考古学 統合失調症とは何だろうか

糸川昌成先生から『こころの科学』の連載が単行本化され出版されたとのメールを受け取り、拝読中。

サブタイトルにある「統合失調症とは何だろうか」にあるとおり、著者は精神疾患分子生物学的研究を続けてきたが、この本は生物学的精神医学の概説書ではない。その議論は科学哲学的な問題意識から医療人類学、そしてセレンディピティシンクロニシティへと展開する。しかし安易なスピリチュアリティへと飛躍することはない。「私個人は、宗教的な発想や敬虔な信仰生活とは無縁の人間である。だから、自分が経験した非因果的な光景を、あくまで科学者としてここで語ってみたい」(p.75)と語る糸川は、といって頑固な科学主義者でもない。学術的な語りの中にも、氏の素顔、茶目っ気たっぷりのヒューマニズムが見え隠れしている。

CE2020/02/20 JST 作成
蛭川立