承前。
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人生とはとどのつまり賭けや。やってみなはれ[*1](鳥井信治郎(1879〜1962))
エンベロープウイルスに対してはエタノールの濃度が40%以上あれば充分らしい。
鳥井商店[*2]から実験用に取り寄せた40%エタノール[*3]はウイルスのエンベロープを破壊するのにじゅうぶんな濃度なので、そのまま小さい容器に移し替えれば消毒用になる。しかし、不純物を取り除き、他の細菌類まですべて消毒できるようにするためには、やはり70%まで精製しなければならない。
あんがい、お酒で消毒ができるとは思われていない。だから、ピータージンは700mlの瓶が1000円で入手できる。そこに含まれているエタノールは
であり、ここから70%エタノールを
つまり400mlつくることができる。これを70%エタノール500mlとみなす[*4]。これの相場が現在5000円と高騰している。だから、蒸留作業によって4000円の利益が出る。
設備投資や燃料費、そして稼働時間もさしてかからない。
10本売れば4万円、100本売れば40万円、1000本売れば400万円、10000本売れば4000万円のの利益となる。1年ぐらいは遊んで暮らせるだろうか。しかし、それで私腹を肥やして終わりでは、たんに阿漕な商売である。
カネはしっかり儲ける。しかし儲けた金を元手にして、さらに革新的な新商品を開発する。それゆえに、さらに儲かるという仕組みだ。もちろん、収益の一部は社会に還元することも忘れてはならない。たとえば、アルコール依存症患者の更生施設や依存症患者をかかえ苦悩する家族の会に寄付する。消毒薬として使用してもらうというのも時代の要請に応える英明な判断だ。
社会とともにつねに前進し続ける。それが大阪商人のパイオニア・スピリットだ。
CE2020/04/29 作成
CE2020/05/24 JST 最終更新
蛭川立
*1:「鳥井信治郎」『コトバのチカラ.JP』(2020/05/17 JST 最終閲覧)
*2:鳥井商店は1929年にワインからウイスキーを蒸留することに成功し「サントリーウヰスキー白札」を発売した。「サントリーの歴史」『SUNTORY』(2020/04/30 JST 最終閲覧)より引用。1899年に大阪市西区で創業した鳥井商店は著者の母方の粕野商店の縁戚である。鳥井の母語は大阪標準語とされる商家の船場語である。たとえば「アホなことはやめとき!ゼニもうけの方法やったらなんぼでもあるやん、そんなんで儲けたってしゃあないで」といった、コメディアンの言語として流通している、庶民的な大阪口語とは趣を異にするに注目されたい。
*4:「きちんと計算どおりにするなら、キリン ギルビー ジン 47.5% 750ml」(1200円)を使えば71%エタノールが500mlできる。この場合の利益は3800円である。